Category Archives: Thought

フューチャー・オブ・ワーク

先に紹介しました高尾隆さんと中原淳さんによる「Learning × Performance インプロする組織  予定調和を超え、日常をゆさぶる」では、企業・組織の活動を日常/非日常という視点から捉えていました。

アイデアキャンプの書籍ではコレクティブな活動:組織的分業/コネクティブな活動:接続的創造という視点から、企業・組織の活動を捉えました。
コレクティブな活動
・役割分担を基に分業と調整を行い、各人の努力が組織のアウトプットにまとまるように統合
・組織の形態としてはヒエラルキー型となることが多い
コネクティブな活動
・多様な人の多様な視点で新たなアイデアを生み出す
・いつもの役割を離れ、ダイナミックなネットワーク型の組織を作り出す

この捉え方は幾つかの文献や書籍から影響を受けていますが、こうした働き方の違いを分かりやすく説明しているもののひとつが、トマス・W・マローンによる「フューチャー・オブ・ワーク (Harvard business school press)」だと思います。

情報伝達コストと組織のあり方の関係、権限を集中する組織と分散させた組織の違いやメリット/デメリットなどが説明された上で、集中化された階層型組織と分散化されたネットワーク型組織をどうバランスさせ二つの矛盾した組織のあり方を超越した組織を作り出せるのか、について論じられています。

AかBかという二元論ではなく、それらを止揚して良いトコ取りはできるのか?ということですね。
コレクティブな活動はオフィスの中で、コネクティブな活動はオフィスの外へ、というのがベーシックなアイデアキャンプのスタイルです。もちろん他にも色々な組み合わせ方があることでしょう。

もちろん集中管理型でガンガン行くような会社はこれからもあるでしょうし、分散育成型でダイナミックに動く会社もあることでしょう。そうした戦術のバリエーションが広がるにつれて、それぞれの企業・組織がみずから戦術の立ち位置をより明確にしていくことが求められているのだと思います。

帯には「『命令と管理』から『調整と育成』へ」と書かれています。
「アイツこんど管理職になったんだってさー」という会話がされる会社と、
「アイツこんど育成職になったんだってさー」という会話がされる会社とでは、
ナニかが違う気がします。

そうした違いはサッカーチームのスタイルの違いに近いのではないか、と良く思います。代表チームでは国民性が反映される部分がありますし、監督が変われば戦術ががらりと変わることもあります。どういったシステム・スタイルが良い悪いといった議論もよくされますが、勝てば褒められ,負ければ貶められる…。こうした点も企業のシステム・スタイルと近いようにも思います(w

エントリー経営の未来+組織の重さでも近い書籍をいくつか紹介しています。


インプロする組織

高尾隆さんと中原淳さんによる「Learning × Performance インプロする組織  予定調和を超え、日常をゆさぶる」を読みました。

即興演劇:インプロを用いたワークショップをさまざまな組織・企業に向けて行った記録、その文脈と意味がお二人の文章および対談によって綴られています。
「そうそうアイデアキャンプもそういうことなんです」と言いたくなる文章が多く、とても勉強になりました。そして、インプロの特徴が五つ紹介されているのですが、それがとてもキャンプの特徴とも近いと思いました。

幾つか引用したいと思います。

第2章 企業でインプロを実践することの意味

組織社会化の「諸刃の剣」 – メリットとデメリット
p. 58
かくして、これまでの商品やサービス、それを支えるオペレーションを守りつつ、同時に「エッジの効いた新たな物事」を創造していくことが、企業・組織には求められます。
(中略)
今、私たちは、何らかのかたちで「慣性軌道(イナーシア)」を脱出し、いったん「外部の視点」から日常を見つめ直したり、「内省」したりする機会が必要になるのです。
今,私たちが直面していることは、何らかのかたちで、個人をゆさぶり、組織をゆさぶることなのです。

インプロの反転世界 – 五つの特徴
p.65 以上、私たちはインプロの五つの特徴を見てきました。「即興的」「創造的」「恊働的」「脱権力(民主的)」「共愉的」…もうすでにおわかりのように、インプロは、私たちの典型的な日常生活を、一時的に裏返した活動であり、そこで生まれうる世界は「反転世界」です。この「反転世界」こそが、「日常」の異化のきっかけであり、人々を深いレベルの内省に誘うのです。

高尾さんのtwitterを読ませていただくと、即興演劇はサッカーにも近いようです。確かに五つの特徴を備えていますし、ブラジルの舞踊的格闘技カポエイラにも近いと思いました。

もちろんキャンプもこれらの特徴を備えていますね。:-)
ここで言われている「日常」がアイデアキャンプで言うところの「コレクティブな活動」であり、「反転世界」が「コネクティブな活動」に相当します。

3章ではワークショップで行われた「がんばらない腕」「魔法の箱」「さしすせそ禁止」など幾つかのアクティビティを通じて、参加者どうしの関係がどのように変化していったかがドキュメンタリー的に描き出されています。
4章では、高尾さんによる1章「からだを動かし、日常をゆさぶるパフォーマティブ・ラーニング」と中原さんによる2章「企業でインプロを実践することの意味」で述べられた内容が対談形式で再度すこし違った視点から編み上げられています。

身体を使って半ば無意識的に関係を築くインプロと日々利益を上げるための業務との関係は、カーニバル・祝祭・祭りといった非日常と日常の関係として述べられています。

4章 対談◎パフォーマティブラーニングの時代〜身体・学び・イノベーション

身体性回復へのまなざし
p.231 もともと近代以前の社会では、こいうった非日常的な身体をともなったカーニバルがどの組織、どのコミュニティにも存在していたのだと思います。それが日常をフレッシュにし続けていた。カーニバルという祝祭の場は、日常を続けていくための大きな働きを持っていたのだと思います。それが、近代社会の中でいろいろなものを合理化していくときに、一見、不合理なカーニバル的なものを全部削り落としていった。ノリで動いてしまうような即興的なからだは、予測不可能で統制ができない怖いものだ。人どうしの予定外の直接的な出会いも、ちゃんと計算してつくられた既存の組織を崩してしまう恐れがある。だからそういうものたちを排除した。その結果、変化することのない、リスクのない、管理されたからだと管理された組織が残り、そして息が詰まっていった…。
日常を維持するためにも、ほんとうはカーニバルが必要なんですよね。そのカーニバル的なものがなくなったときに、今の組織やコミュニティは苦しくなってきたのだと思います。だからといっていまさら会社で宴会や運動会などの以前同様の祭りをやってもみんな参加したがらないし、その効果も疑問でしょう。だから、祭りに変わるカーニバル的なものを人工的にでもつくる必要がある。感覚が鋭い企業は今、そういうものを探しているんでしょうね。

「そういうもの」として会社の外で行われるワークショップに注目が集まっているように思います。先に述べられた五つの特徴:「即興的」「創造的」「恊働的」「脱権力(民主的)」「共愉的」をそなえたものは、特にこれから注目されることでしょう。
ぜひ一度、高尾さんのインプロワークショップも体験したいです。


雑誌BRUTUSで「キャンプ」と「働き方」特集が!

マガジンワールドの雑誌「BRUTUS」の6/1号と7/1号,アイデアキャンプとだいぶ関連の深い特集が組まれていました。
No.732 「キャンプしようよ」
No.734 「あたらしい仕事と、僕らの未来。」
何かシンクロしているのでしょうか?!

どちらの特集でも、道具と場所の使い方*ライフスタイル/ワークスタイル、のいろいろな新しい組み合わせが紹介されています。

それぞれの新しい組み合わせが、新しい人と人とのコミュニケーションを生み出しているのが面白いと思います。ぜひ合わせて読んでみてください。


経営の未来+組織の重さ

p1080129

沼田幹 組織デザイン

1人で出来ることもあれば、何人かで助け合いながらしか出来ないこともあります。その何人という数が増えてくると、みんながスムースにコミュニケーションがとれるような仕組みが必要となってきます。

そうした仕組みとしては、たまり場的な場所であったり、メーリングリストであったり、人をグループに分けて組織をつくる、など色々な方法があり得ます。

組織のデザインって、何でしょうね。きちんと定義がなされている本がありました。
沼田幹,組織デザイン,日本経済新聞社
● p. 17
「組織を設計する」という作業は、分業を設計し、人々の活動が時間的・空間的に調整されたものになるような工夫を施すことであり、そのようにして出来上がった分業と調整手段のパターンが組織デザインである。

そしてこうした設計には多様な調整手段を組み合わせていくのだ、とされています。

組織の代表的なパターンはツリー型の組織だと思います。ほとんどの会社はそうなっていますね。
王様や殿様がいた時代を思い浮かべてもツリー型の組織ですから、古来から永々と続いている組織デザインかと思いきや、ある時期にイノベーションがあった+これからイノベーションをしなければならない、と言っている人がいます。それがゲイリー・ハメルという人です。

p1080126

ゲイリー・ハメル 経営の未来 日本経済新聞出版社

「20世紀初頭のF.W.テイラーの科学的管理法とM.ウェーバーの官僚組織のコンセプトは、それ以前には存在しなかった大企業のマネジメントを可能にしたという意味で大きなイノベーションだった。」、そして「以降は官僚組織を漸進的に進化させるだけで、ローカルミニマムに落ち入っている。必ずしも現在の環境に適した解であるとは限らない。ジャンプした新しい方法=経営管理のイノベーションが求められている。」というのです。

イノベーションという言葉はやや流行語に近くなっていますが、製品やサービスにイノベーション起す以外にも、経営管理のイノベーションの大切さを説きつつ、
1. 規模の大小を問わず、どの企業でも、戦略変更のペースを劇的に加速させること。
2. イノベーションをすべての社員の日常的な業務にすること。
3. 社員を奮起させて各自の最高の力を発揮させる魅力的な労働環境を築くこと。
が『経営の未来』だとしています。W.L.ゴア(ゴアテックスの会社です)やグーグルやIBMを事例としつつ、組織を設計する新しい原理を見つけなければいけない、とします。

そうした原理の要素としては、周縁=正の逸脱から思考を持ち帰る:アイデアの民主主義を築く、人間の想像力を拡大する、資源をダイナミックに配分する、集合知を集約する、古いメンタルモデルの足かせを最小限にする、すべての人に参加するチャンスを与える、といったことが挙げられています。
インターネットの特徴を挙げて、「これは二十一世紀の経営管理システムの詳細な設計仕様ではないとしても、大きくかけ離れたものではないと私は思う。」と述べています。

まぁ理想はそうなんだろうけど、日本じゃぁムリだよ…ウチじゃぁムリだよ…なんてつぶやきも聞こえてきそうです。

p1080127

沼田幹 組織の重さ

そんな課題感を持って?、日本企業の強みを生かしつつもこれからの企業はどうあるべきか、といった研究もなされています。
沼上幹 他,組織の〈重さ〉―日本的企業組織の再点検,日本経済新聞出版社

ちょっと要約をすると、本書では、ミドルマネジャーのタテ・ヨコ・ナナメに密接な相互作用(グループ・ダイナミクス)を通じて実現される「創発戦略」という日本企業の強みが、最近は機能不全に陥っているという問題意識のもと、その機能不全を引き起こす組織構造・組織特性を明らかにしようとしています。
創発戦略の創出と実行を妨げる相互作用プロセス・組織内調整の難しさを『組織の重さ』と定義し、それを促進する要因を抽出しています。検証方法としては、18社の107事業単位を対象に大規模質問票調査を実施し、統計分析をしています。
その分析から得られた結論は、以下の4点です。
第一に、軽い組織は有機的組織(補足:ボトムアップ/グループ・ダイナミクス)と機械的組織(補足:トップダウン/ビュロクラティック・ダイナミクス)の共存が見られること。
第二に、軽い組織には、タスク志向かつ人間関係志向のリーダーがいること。
第三に、上記リーダー行動は組織構造に依存する面もあるが、組織構造にかかわらず望ましいリーダー行動をとれること。
第四に、組織リーダーとメンバーとの認識ギャップを埋めるには、本社スタッフの役割が重要であること。
といった内容です。
つまり、これまでの組織の在り方に経営の未来で語られているような組織を混ぜていきましょう、ということなんだと思います。

アイデアキャンプに出かけて、試行錯誤できるボトムアップで軽い組織を作りつつ、外で出したアイデアをいつもの場所へ戻って実行に移す。
そんな人達がもっと日本中に増えると良いのではないか。そんなことを我々は思っています。


野外科学と発想法

川喜田二郎, 発想法, 中公新書

川喜田二郎, 発想法, 中公新書(1967). 古典の名著ですね。

アイデアを出す有名な方法に「KJ法」というものがあります。川喜田二郎さんという方が提唱された方法なので、イニシャルをとって(K)川喜田(J)二郎法と名付けられました。カードに情報の断片をたくさん書いて、それをグルーピングして徐々にまとめあげていく発想法です。

しかし、KJ法は単なる発想法のひとつである、というのは狭い見方のようなのです。

その著書である発想法のまえがきには、
「その発想法は、もともと野外科学の必要性から始まった。ことに、野外で観察した複雑多様なデータを、「データに自体に語らしめつつ、いかにして啓発的にまとめたらよいか」という課題から始まっている。かような課題は、科学的方法論としては、今日までまともに解決されたことはなかったのである。」
とあります。

川喜田氏は、科学を書斎科学・実験科学・野外科学の3つに大別して、野外科学における実際の観察と経験を重要視しました。そして、その観察と経験を記録してまとめてゆくために、メモノート・清書ノート・パンチカードに整理した清書ノートをつくり、そのカードになった資料を分類し統合していきながら仮説を発想するという、野外科学の方法論の体系化を試みたのです。問題提起と内部探検を行って外部探検をし、現場で観察を行ったあとに、仮説を打ち立てる。さらに野外で実験を行い、観察して検証するまでを”ひと仕事”と呼びました。
地理学の出身で文化人類学の研究を行った川喜田氏は、地域や民族をありのままの姿でどう研究すれば良いのかを体系化しようとしたのですね。

中でも、仮説を発想するにはどうしたら良いのか。KJ法は資料の統合法と発想法として、ひと仕事の中の一部分に焦点があてられたものなのです。
そこではノートの取り方・カードへの整理・分類・要約、そして「相互に比べることのできない異質な一組のデータから、いかにして意味のある結合を発見することができるか。また新しい発想をうちあげることができるか」(p. 54)に意識が向けられていきます。

野外科学とアイデアキャンプはどういう関係にあるか??新しい結合を発見するチャンスのような気がします。同じく著書 川喜田二郎, ひろばの創造―移動大学の実験, 中公新書(1977) がヒントではないか、と思っているところです。

「KJ法」の方が「野外科学」よりも有名かと思いますが、川喜田氏が野外科学という言葉で表した考えかたって、とても大事なことだと思います。

川喜田二郎, 続・発想法, 中公新書

川喜田二郎, 続・発想法, 中公新書(1970) 発想法の続編ですね。
まえがきでは「今日の文明は、動脈硬化した管理社会の方向に、刻一刻転落しかかっている。またその中で人間らしさを損なわれた人びとによる、混乱と内戦が襲いかかってくるだろう。こういった危機をのりこえ、創造的な参加社会への血路を切り拓くために、少なくともKJ法的なものが必要だ。」とあります。アツいです。