お弁当交換

強制発想というアイデア発想方法をご存知でしょうか。まあそれほどヒネリがあるものでもないのですが、AとBあるいはCという一見脈略のない異なるものの組み合わせを強制的に掛け合わせることで、新しいアイデアを生み出そうというものです。

アイデア発想手法の大家であるジェームス・ヤングも、アイデアとは既存のものの組み合わせでしかないというようなことを言っていますから、オーソドックな手法とはいえ、なかなか筋のよい方法だったりします。

ここで取り上げるのは、概念の強制的な組み合わせではなく、食事の強制的な組み合わせです。しかも、給食のように一斉に強制的な食事をするのではなく、他人が選んだものを交換して食べるというものです。その名もそのままお弁当交換。

普通はお弁当というのは自分で食べるために持ってくる、あるいは買ってくるものですが、これをみんなでそっくりそのまま交換し合おうというものです。間違ってもおかずを部分的に交換するという生半可なものではありません。お弁当をそっくりそのまま交換してしまうのです。

これは予告してしまうと面白くないので、予告なしでやったほうがよいでしょう。予告してしまうと、どうせ自分では食べないからこれでいいやというものを持って行きがちになるからです。それではせっかくのシリアスさがなくなってしまいます。

自分で食べるはずのお弁当があっと自分の手元から離れ、一方でさっきまで他人の期待とともに存在していたお弁当が手元にやってくるわけです。

これは、実際にやってみるとわかるのですが、いろんなことを考えさせられます。まず、自分が食べようと楽しみにしていた、あるいはイメージしていたものが食べられなくなる不意打ち感が感覚を揺さぶります。そして他人が選んだものを強制的に食べなくてはならなくなったときの心の準備のなさに二度驚きます。お米を食べられると思っていたのに、パンになったなんてことはよく起こるパターンです。

次に、自分が食べるはずだったものが他人の手に渡ったときに、それを受け取った人がうまくそれを受け入れてくれるだろうか、ちょっと心配になるというのも意外な心境だったりします。逆に押し付けられたお弁当にやや戸惑いを感じざるを得ないこともしばしばです。こんなにたくさん食べられないよ・・・とか。

お弁当交換は、強制体験を通じたセレンディピティ(偶然性)の獲得であり、チームの理解に貢献するものでもあります。食という趣向性が高い経験の共有を通じて、チームの多様性を体で感じることができます。


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