インプロする組織

高尾隆さんと中原淳さんによる「Learning × Performance インプロする組織  予定調和を超え、日常をゆさぶる」を読みました。

即興演劇:インプロを用いたワークショップをさまざまな組織・企業に向けて行った記録、その文脈と意味がお二人の文章および対談によって綴られています。
「そうそうアイデアキャンプもそういうことなんです」と言いたくなる文章が多く、とても勉強になりました。そして、インプロの特徴が五つ紹介されているのですが、それがとてもキャンプの特徴とも近いと思いました。

幾つか引用したいと思います。

第2章 企業でインプロを実践することの意味

組織社会化の「諸刃の剣」 – メリットとデメリット
p. 58
かくして、これまでの商品やサービス、それを支えるオペレーションを守りつつ、同時に「エッジの効いた新たな物事」を創造していくことが、企業・組織には求められます。
(中略)
今、私たちは、何らかのかたちで「慣性軌道(イナーシア)」を脱出し、いったん「外部の視点」から日常を見つめ直したり、「内省」したりする機会が必要になるのです。
今,私たちが直面していることは、何らかのかたちで、個人をゆさぶり、組織をゆさぶることなのです。

インプロの反転世界 – 五つの特徴
p.65 以上、私たちはインプロの五つの特徴を見てきました。「即興的」「創造的」「恊働的」「脱権力(民主的)」「共愉的」…もうすでにおわかりのように、インプロは、私たちの典型的な日常生活を、一時的に裏返した活動であり、そこで生まれうる世界は「反転世界」です。この「反転世界」こそが、「日常」の異化のきっかけであり、人々を深いレベルの内省に誘うのです。

高尾さんのtwitterを読ませていただくと、即興演劇はサッカーにも近いようです。確かに五つの特徴を備えていますし、ブラジルの舞踊的格闘技カポエイラにも近いと思いました。

もちろんキャンプもこれらの特徴を備えていますね。:-)
ここで言われている「日常」がアイデアキャンプで言うところの「コレクティブな活動」であり、「反転世界」が「コネクティブな活動」に相当します。

3章ではワークショップで行われた「がんばらない腕」「魔法の箱」「さしすせそ禁止」など幾つかのアクティビティを通じて、参加者どうしの関係がどのように変化していったかがドキュメンタリー的に描き出されています。
4章では、高尾さんによる1章「からだを動かし、日常をゆさぶるパフォーマティブ・ラーニング」と中原さんによる2章「企業でインプロを実践することの意味」で述べられた内容が対談形式で再度すこし違った視点から編み上げられています。

身体を使って半ば無意識的に関係を築くインプロと日々利益を上げるための業務との関係は、カーニバル・祝祭・祭りといった非日常と日常の関係として述べられています。

4章 対談◎パフォーマティブラーニングの時代〜身体・学び・イノベーション

身体性回復へのまなざし
p.231 もともと近代以前の社会では、こいうった非日常的な身体をともなったカーニバルがどの組織、どのコミュニティにも存在していたのだと思います。それが日常をフレッシュにし続けていた。カーニバルという祝祭の場は、日常を続けていくための大きな働きを持っていたのだと思います。それが、近代社会の中でいろいろなものを合理化していくときに、一見、不合理なカーニバル的なものを全部削り落としていった。ノリで動いてしまうような即興的なからだは、予測不可能で統制ができない怖いものだ。人どうしの予定外の直接的な出会いも、ちゃんと計算してつくられた既存の組織を崩してしまう恐れがある。だからそういうものたちを排除した。その結果、変化することのない、リスクのない、管理されたからだと管理された組織が残り、そして息が詰まっていった…。
日常を維持するためにも、ほんとうはカーニバルが必要なんですよね。そのカーニバル的なものがなくなったときに、今の組織やコミュニティは苦しくなってきたのだと思います。だからといっていまさら会社で宴会や運動会などの以前同様の祭りをやってもみんな参加したがらないし、その効果も疑問でしょう。だから、祭りに変わるカーニバル的なものを人工的にでもつくる必要がある。感覚が鋭い企業は今、そういうものを探しているんでしょうね。

「そういうもの」として会社の外で行われるワークショップに注目が集まっているように思います。先に述べられた五つの特徴:「即興的」「創造的」「恊働的」「脱権力(民主的)」「共愉的」をそなえたものは、特にこれから注目されることでしょう。
ぜひ一度、高尾さんのインプロワークショップも体験したいです。


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