心理的道具×物理的道具の原風景

僕(中西)が小学生の1980年代前半は中学受験が盛んになりつつあった頃でした。宝塚の市立小学校に通っていた僕は、よく分からないうちに入塾試験をいくつか受け、阪急沿線にある阪口塾というところに通うようになりました。たくさんの机がならんだ寺子屋のようなたたずまいの部屋に60人ぐらいの小学生が正座/あぐらをかいて勉強をしていました(いまは福村塾という塾にその流れが継承されているようです)。

その塾では算数を主に勉強していた記憶がありますが、ちょっと変わった解き方を習いました。あらゆる文章題を線分図に視覚化して問題を解くのです。阪口先生が関られた問題集(文章題の解き方がわかる,教学研究社)のサイトにその様子が図がアップされています。

阪口塾 線分図

そしてこの線分図を描く時には、塾が別注した無地のノートを使いました。とにかく先生は「紙はぜいたくに使え〜」と言って、ひとつの線分図を見開き2ページに描くときもありました。この写真は実家に1冊だけ残してあった阪口塾のノートです。開いて使いやすいようにしてあるのか、糸綴じのノートですね。


転校生人生を送っていた僕は、5年生の1年間だけこの塾に通って、転校してしまいました。転校先でいくつか塾をさがしましたが、この組み合わせに馴染んでいたせいか、新しい塾には行かず自宅で1人受験勉強をしました(小学6年生なのにエラいですね(笑))。他の塾がふつうに見えてしまったのでしょうか。

線分図や数字や記号などのことを『心理的道具』と呼ぶ考え方があります。ロシアの心理学者ヴィゴツキーは「道具によって人間は対象世界を自己のコントロールの下に置く。同様に心理的道具によって、私たちは他者そして自己の心を統御するのである。心理的道具は実在の対象物である。以下に示されるような実在物が心理的道具のリストをつくる。」と述べ、言語、記号、記数法や計算の形式、記憶術、代数記号、芸術作品、文字、図式、図表、地図、設計図などを心理的道具の例としてあげました。

アイデアキャンプで紹介しているさまざまな発想技法も心理的道具と言っていいでしょう。

そしてその心理的道具を使いやすくする物理的道具の組み合わせとして、ポストイットや段ボールや画板などを使います。

さらに複数の心理的道具を使い分けられるよう、ペンで手書きにしていろいろなサイズの紙を使います。

そうした組み合わせを考えているのは、文章題を解くために線分図と無地のノートを使った思い出が、考えることの原風景になっているからなのかもしれません。


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